社労士観点から考えるテレワークができない労務管理問題と対応方法を解説

2021/08/16

この1年半、新型コロナウイルス関連のニュースを見ない日はありません。様々なイベントが自粛となったり、学校が休校になったり、飲食店の営業時間が短縮されたり、社会のあらゆる分野に大きな影響が出て、経済の面でも大変厳しい状況となっています。

働き方にも大きな変化が訪れました。感染拡大防止のために在宅勤務などのテレワークや時差出勤が奨励され、実際にテレワークを導入する会社も増え、IT企業などほとんとの社員が原則テレワークという会社もあります。

その一方で、特に労務管理の観点から、様々な法的な問題が生じてきたと言われています。本記事では社会保険労務士(社労士)の観点からみたテレワークをめぐる法的な問題点とそれへの対応方法について見ていきたいと思います。

テレワークって、やっぱり必要なの?

平成29年に政府が取りまとめた「働き方改革実行計画」においても、テレワークの導入を支援していくこととされていましたが、その時点では大多数の企業においてはテレワークの導入が積極的に進められている状況にはありませんでした。

そのような中、令和2年春からの新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令によって、多くの企業が十分な準備のないままに急遽テレワークの導入に踏み切らざるを得ない事態となりました。

そのように、手探りのまま、とにかくテレワークに踏み切った会社が多く、労務管理や賃金をめぐる問題など、あとから管理部門が整理をしなければならない課題も出てきたのです。

ここで、「テレワークの意味」と「在宅勤務」について少し言葉の整理をしておきましょう。

テレワークの意味

「テレワーク」とは、文字通り、テレ(Tele=離れたところで)ワーク(Work=働く)という意味で、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」という3つの就労形態をまとめた呼称です。

先に述べた働き方改革の一環で政府主導の下で取り組みが進められていました。東京オリ・パラの混雑緩和策としても重要視されていましたが、コロナの影響でオリンピックが無観客となる一方で、テレワークの導入が進んだのは皮肉な結果です。

在宅勤務の意味

「在宅勤務」とは、自宅を就業場所とする勤務形態で、モバイルワークとは、移動中や顧客先、カフェなどを就業場所とすることです。一方、「サテライトオフィス勤務」とは、所属するオフィス以外の他のオフィスなどを就業場所にすることを指します。遠隔地にわざわざもう一つオフィスを作って移り住むケースもあります。

テレワークには、もともとワーク・ライフ・バランスの向上というメリットがあり、本来はむしろこの点が主眼でした。感染拡大防止の観点でいうと、現時点で推奨されているのは主に「在宅勤務」といえます。

今回の新型コロナウイルスにより初めてテレワークを行うという方も多いと思いますが、コロナ後を見据えた長い目で見ての働き方改革の観点からも、テレワークを活用することはとてもおすすめです。

テレワークは全従業員が対象なの?

全従業員をテレワークの対象とするべきかという問題については、まず「業務のどこまでをテレワークの対象とすべきか」という点を検討する必要があります。

基礎データの電子化が進んでおらずリモートで取り扱えないなど、現時点ではテレワークが難しい業務もあるでしょう。そのため、まずは、どの業務をテレワークの対象とし、どの業務を対象としないのか、といった仕分けが必要です。最初にこの点を明確にしていないと、テレワーク導入後に混乱が生じ、業務の遂行に支障をきたすことになります。

次に「どの従業員をテレワークの対象とするか」という点があります。これは、どの業務がテレワークの対象とするか、とも密接に関係しますが、テレワークの対象とする業務に従事する従業員のすべてにテレワークを行わせるかは、よくよく検討が必要です。

入社したばかりの従業員が、上司などの直接の指示やアドバイスを得られない中で、いきなりテレワークを行うのは酷でしょう。リモートでの指示やアドバイスは、双方にとって、職場での対面での場合に比べてはるかにストレスを感じるものです。本人の成長のためにも避けるべきでしょう。
やはり、ある程度は担当業務へのスキルを要する従業員であってはじめて、業務の効率を落とさずにテレワークを行うことができるのです。

また、在宅勤務の場合、仕事場となる自宅が仕事に集中できる環境であることや、セキュリティの確保の観点からも適しているかのチェックが必要です。自宅ですと、仕事の合間に家事をしたり、家族がパソコンや資料をのぞくことができる状態にあることがよく見受けられます。

これでは、業務の効率やセキュリティの観点からテレワークには適さないといわざるを得ません。こうした従業員ひとりひとりの状況を勘案して、テレワークの対象者を個別に指名しておくことが必要です。

テレワークの労働時間管理はどのようにすればいいの?

テレワークであっても、当然のことながら、労働時間管理は行わなければいけません。テレワーク勤務者についても、労働基準法は適用されますので、事業主である会社は労働時間を把握する義務がありますし、残業代や深夜労働といった割増賃金の支払い義務があります。では、どのように労働時間を管理していけばいいのか、具体的に見てみたいと思います。

「事業場外みなし労働時間制」を導入するケース

ひとつの方法として「事業場外みなし労働時間制」を利用することがあげられます。
これは、簡単にいうと本来の職場以外で仕事をした場合であって、会社側が労働時間を把握することが難しい場合に、一定の条件を満たせば、あらかじめ決められた労働時間分の仕事をしたとみなすものです。

例えば、保険の外交など外勤の営業職に適用されていることが多いのではないでしょうか。在宅勤務においてこの「事業場外みなし労働時間制」を利用するには、次の4つの条件を満たす必要があります。

・労働時間の算定が難しいこと
・業務が自宅で行われること
・使用者(会社側)の指示で、パソコンが常時通信可能な状態になっていること
 ※パソコンの回線が接続されているだけで、労働者(従業員)がPCから自由に離れられる状態にある場合は、「時通信可能な状態」には該当しません。
・作業が随時、用者(会社側)の具体的な指示に基づいて行われていないこと
※業務の目的、目標、期限いった基本的な方針の指示は、「具体的な指示」には該当しません。

なお、所定労働時間が8時間であったとしても、その業務が通常10時間要する野である場合は、10時間働いたものとみなされます。

「事業場外みなし労働時間制」を導入しないケース

最近では、PCのログ等によりPCを使用した時間が容易に算定できるようになってきました。これは、常時PCを使う業務においては、労働時間の算定が容易であることを意味し、「事業場外みなし労働時間制」利用の条件のひとつ、「労働時間の算定が難しいこと」に該当しないこととなります。

このため、「事業場外みなし労働時間制」の適用が否定された場合、使用者(会社側)には、テレワークの開始時に遡って実際の労働時間を算定し、未払いの残業代があれば支払う義務が生じるということです。

これは会社にとっても大きなリスクですので、あらかじめPCのログやクラウド勤怠管理ソフトの利用によって、しっかりと実際の労働時間管理を行う仕組みとしておく方がよいでしょう。

ちなみに、「事業場外みなし労働時間制」以外に、「裁量労働制」を利用するという方法もありますが、これは弁護士、建築士、デザイナーといった極めて限られた業務に限定されています。また、労使協定書の締結、労使員会の決議書等の労働基準監督署への届け出義務もありますので、採用は困難といってよいでしょう。

テレワーク時の就業時間管理はどう対処すればいい?

テレワークの始業時間や終業時間の管理についても、通常業務と同様とするべきです。つまり、通常業務が午前9時始業、午後5時終業であれば、基本的には在宅勤務の場合も、午前9時には机の前に座りPCを立ち上げ、午後5時にはPCを閉じて席を立つ、といった具合にすることが望ましいといえます。

なお、在宅勤務者用に始業・終業時刻を別途定める場合には、就業規則に記載する必要があります。その上で、在宅勤務者は、始業時や終業時には、メールやチャットなど、あらかじめ決められた方法で会社に連絡を入れるようにしておくとよいでしょう。

連絡とあわせて挨拶や状況報告などを入れ込むことで、コミュニケーションを取ることができますし、在宅勤務者の方もプライベートと仕事の切り替えになります。

テレワークに残業代はあるの?

在宅勤務者の始業・終業時間の管理に関連して、在宅勤務の場合の割増賃金の支払いについて注意点を見ておきたいと思います。

当然のことですが、在宅勤務であっても、時間外労働や深夜労働については割増賃金の支払が必要となります。ただし、在宅勤務の場合、家族が寝静まった深夜に業務)を進めたり、終電の心配がないためについつい長時間の業務になったりしがちです。これは、コストの面からも、従業員の健康の面からも好ましくありませんので、在宅勤務では原則残業を禁止することが理想的です。

それでも残業が必要な場合には、事前に申請する仕組みを設けるとともに、残業の必要性の検討や業務効率の見直しができないかなど、職場内で話し合いをもつことも残業を減らしていく上で効果的です。

従業員側の都合により始業・終業時間を所定の時刻よりも繰り上げたり・繰り下げたりする場合にも、あらかじめ申請することを義務付け、適切な労働時間管理を行うことが肝要です。

テレワークの場合、事業主(会社側)の目が届かない場所で業務を行うことになりますので、コミュニケーションのあり方、勤務時間管理のあり方など、従業員がより効率よく、かつ気持ちよく仕事ができるよう、それぞれの組織に適したテレワークのやり方を検討してみてはいかがでしょう。

テレワークの勤怠管理は効率化ツールがおすすめ

新型コロナウイルス感染症はまだまだ猛威を振るっています。そんな中で、通常業務に加えてテレワーク業務への移行を短期間に進めていくことは、並大抵のことではありません。

テレワークの勤怠管理をサポートしてくれるのがグループウェアの効率化ツールです。全従業員の勤怠管理はもちろん、従業員一人一人のスケジュール管理からプロジェクト管理まで一括管理ができるツールです。

テレワークを検討されている企業は、グループウェアの効率化ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

グループウェアのテレワークのことなら、私たちにご相談ください。

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